キーワードは「読後感」。社員を動かす社内報を作るには?

社内報を発行する目的は……

みなさんは、社内報の発行目的を、どのように設定されていますか?

「経営方針の浸透」、「社内コミュニケーションの活性化」など、社内報を発行する目的は、企業さまによって多岐に渡ります。

 

ターゲットの読者に響く企画の考案。読みやすく、洗練された原稿の作成。必ず読者の目を惹ける、スタイリッシュな表紙デザイン。

こういった個々のページの緻密な練り上げも、つまるところ、社内報を読んだ社員の行動変容を促し、社内報の発行目的を達成するための努力になっているのだと思います。

 

社内報の発行目的を達成する上では、読者ひとりひとりの「読後感」が、非常に重要です。

社内報を読んだ後、社員の行動の出発点になるのは、その読後感に他なりません。どんな読後感を抱いてもらえればよいかという点は、一見簡単に思えて、実はとても奥の深い世界です。

この記事では、読者の「読後感」をどのようにデザインしていくかについて、考えていきましょう。

 

 

「読後感」とは?

そもそも、「読後感」とは何でしょうか。

たとえば、素晴らしい小説を読み終わった後のことを考えてください。

物語の世界を離れたとたん、いろいろな感覚がぼんやり浮かんでくると思います。悲恋のストーリーであれば「つらい」「悲しい」、勧善懲悪の物語なら「よかった」「すがすがしい」などなど。

このような、読み終わったあとに自然に生まれてくる、おぼろげな感覚・気持ちのことを、ここでは「読後感」と呼びます。その読後感をもって、人は読んだ小説を誰かにおすすめしたり、レビューを書いたりと、次の行動に出ていくわけです。

 

読後感は、小説だけに生まれるものではありません。当然、社内報の記事でも、読後感は生まれます。

この読後感が、社内報においても、読者の行動を左右する最も大きなファクターとなります。

たとえば、若手への「経営方針の浸透」が社内報の発行目的であると仮定して、シミュレーションをしてみましょう。

 

 

読後感を軽視すれば、社内報の価値が底に落ちる

経営方針を浸透させるため、ご担当者様が経営陣に「経営方針の概説」という原稿を依頼し、それが到着したとしましょう。専門用語たっぷり、ひたすら会社のことを語った原稿を、「シンプルな方がいいだろう」と、簡便なレイアウトで掲載しました。

果たして、読者はどんな読後感を持つでしょうか。

 

難しい言葉が多すぎて、正直、あまりきちんと理解できなかった」という、もやもや。

現場にいる私たちには興味なんてないんじゃないか?」という、いらいら。

経営方針か。見た目もつまらないし、読まなくていいや」という反応も考えられます。これでは経営方針が浸透するどころか、社員の気持ちはますます会社から離れていってしまいます。

 

「経営方針の浸透」には、単に「経営方針」を概説するだけでは足りない、ということなのです。

読者が経営方針について、「いい方針だな」と共感した上で、「腑に落ちた」読後感を抱いてもらう必要があります。そこで初めて、社員は経営方針にのっとって社業に取り組めるようになるのです。それでこそ「経営方針の浸透」と言えます。

 

このような読後感を抱かせて、かつ、それに伴う行動変容を促すためには、以下のような調整が必要です。

 

・必要と判断すれば原稿の専門用語を減らし、わかりやすい言葉に置き換えるか、専門用語に注釈をつけるなどの相談を執筆者と行なう。

・会社のことだけでなく、社員への思いや寄稿者自身の身近なことに触れ、親しみの湧く記事にする。

・タイトルのデザインをいつもと大きく変えたりするなど、インパクトのあるレイアウトに仕上げ、そのページに読者が惹きつけられるようにする。

 

もちろん、目指すべき読後感は、社内報の発行目的によって異なります。

「社員同士のコミュニケーション活性化」が目的なら、「あの人と話したい!」と思えるよう、他の社員のことが「気になる」読後感。

「将来のビジョンの共有」なら、「いいビジョンだな」と思えるよう、貴社のビジョンに「わくわくする」読後感。

「若手社員・中途採用社員の離職率低減」なら、「いい会社!」「安心して働ける!」と思ってもらえるよう、貴社の福利厚生や経営基盤に「安心できる」読後感。

 

読後感をデザインするためには、これら「気になる」「わくわくする」「安心できる」などのように、狙いを簡単な言葉に置き換えることが有効です。

社内報全体だけでなく、記事単位でも、このような狙いとなる読後感を定めておけば、そこを目指して原稿やレイアウトを調整していきやすくなります。

 

 

「読後感」が社内報の命運を握っている

 

 

 

 

 

 

いかがでしたか。

社内報は、どの企業さまでも、課題を解決するために目的をもって発行するものです。

ただ単純に情報を伝えるだけでは、読者の心にも響かず、素っ気ない読後感で終わってしまいます。読後感を狙いどおりのものとするためにこそ、記事の文体からレイアウトに至るまで、趣向を凝らす必要があるのです。

 

「わくわくした」「あの人が気になる」「ここならやっていけそう」「頑張らなくちゃ」。

社内報の使命を達成できるかどうかは、ひとりひとりの「読後感」をどうデザインするかにかかっています。

 

 

 

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ディレクター:今枝
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そのような文章に出合える機会は、多くはありませんが、その感覚は、簡単に消えるものではありません。
大江健三郎『万延元年のフットボール』を読み終わった直後なんて……。
と、そういった文学作品に限らず、練りに練った文章は、確実に読者へ届きます。最良の「読後感」を求めて、社内報をよりよいものにしていきましょう!