デザインの「参考」はどこまで許される?

社内報を制作していると、他社の広報誌、雑誌、Webサイトなどのデザインを「参考」にする場面は少なくありません。しかし、その参考がどこまで許されるのか。どこまでが類似で、どこからがアウトなのか。これは社内報担当者にとっても注視しておきたいテーマです。

1年ほど前、ある自治体のお祭りポスターのデザインが、別の自治体で過去に制作されたポスターのデザインと酷似していたとして、すべて回収・作り直しになったというニュースがありました。 この件は「著作権侵害かどうか」という法的な論点と、「新規性を満たしていない」という実務的な論点が複雑に絡み合っています。

 

著作権の観点から見る「デザインの類似」

実は、デザインが著作権侵害として裁判で争われ、侵害と認められるケースは多くありません。
著作権法では、著作物を「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義しています。つまり、そもそもの創作性が認められなければ著作物ではなく、著作権の保護対象にもなりません。
過去の裁判では、ある店舗の広告チラシのデザインが別店舗のチラシのデザインに酷似しているとして争われましたが、裁判所は「そのチラシのデザインはありふれた表現で構成されており、創作性は認められない」と判断しました。創作性がなければ著作物とは言えないため、結果として著作権侵害が成立しませんでした。

 

著作権侵害にならないケース

仮に創作性が認められたとしても、著作権侵害と判断されるには
• 類似性(本質的な特徴を直接感得できるか)
• 依拠性(元の作品を参考にした事実があるか)
の両方が必要です。
ありふれた表現や一般的なアイデアが共通しているだけでは、類似していても著作権侵害にはなりません。これは「少しでも似ていればアウト」としてしまうと、創作活動が極端に制限され、著作権法の目的である「文化の発展の寄与」に反してしまうためです。

問題となったポスターでは、あるデザイン的な特徴が元の著作物の本質的な特徴を直接感得できるレベルかどうかが争点になったかと推測します。ただし、実際には著作権者は訴えたわけではなく、酷似していたとされる元のポスターはすでにお蔵入りになっていたもの。著作権侵害になるかどうかは、裁判で争ってみない限り断言はできません。

実務上の問題は「新規性がない」こと

自治体がそのデザインを採用した理由が「新規性」であったならば、過去のポスターに酷似しているため「デザインに新規性がない」と断言できます。つまり、著作権以前に求められていた要件を満たしていなかったという点で、回収・作り直しになったのは当然と言えるでしょう。そして、ここが社内報担当者にとっても重要なポイントです。

社内報は基本的に外部に公開されることはありませんが、何らかの事情で社外に配布することも考えられます。そこで「他社のデザインに似すぎている」「何かのデザインのパクリでは…」と指摘されてしまうことにでもなれば、企業の信用を損なう可能性もありえるのです。

 

社内報制作における「参考」のリスク管理

冒頭にもお伝えしたように、制作物を作る上で、他社のデザインを参考にすることはよくあります。しかし、参考の仕方を誤ると、著作権侵害以上に大きなリスクを招きかねません。

社内報担当者としては
• 参考にした事例を明確に把握する

• あまりにも類似性が高いデザインは避ける

• 自社らしいかどうかをより重視する

といった工夫が、トラブルを未然に防ぐために重要なポイントになります。

 

著作権侵害になるかどうかだけではなく「自社の企業ブランドやステークホルダーからの信頼を損なわないか」 という視点を忘れず、制作を進めていく必要がありますね。

 

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<ディレクター 西田>
出版社で編集者をしていた頃、上司からよく「マネ・イズ・マネー」と言われました。良い企画は積極的にマネをして、より面白い企画を作ろうということ。ところが今はコンプラの目がとにかく厳しくなり、マネることにも慎重さが求められるように。昔のように「この企画、うちでもやりたいからちょっと拝借」と言えないのが寂しい気もします。