社員参加型の企画を掲載する場合、社員に原稿執筆の依頼をされるかと思います。中には、文章作成が苦手な方もいるのではないでしょうか。「提出された原稿が読みづらいためリライトしたいけれど、どう直したら良くなるのか分からない…」とお悩みの担当者も多いかもしれません。今回は、文章をリライトするときに注意したいポイントと、上手にリライトするためのテクニックについてご紹介します。
注意したいポイント
寄稿者の許可を取る
寄稿された原稿に手を加える場合は、寄稿者の許可を得るようにしましょう。社員が書いたものであっても、文章は著作物として保護される対象であり、著作者には著作者人格権の同一性保持権(著作物を意に反して改変されない権利)があります。事前にリライトの許可を取っておくと、編集作業が進めやすいでしょう。また、リライト後の校正は必ず行ってください。
内容そのものを変更しない
リライトとは、読者がより読みやすく理解しやすい文章に整えることを指します。寄稿者が伝えたいことをくみ取り、内容や構成が大幅に変わることのないようにしましょう。文体やクセは読みやすさに支障がない範囲で残すと、寄稿者の持ち味が生きてきます。
2つの注意したいポイントを踏まえて、より読みやすい文章に整えるテクニックをお伝えします。
上手にリライトするためのテクニック
普段文章を書きなれていないと、一文が長くなり、情報過多になりがちです。例えば、中途採用者の紹介ページで最近ハマっていることとして、寄稿者から下記の文章が送られてきたとします。
「普段パン屋を巡ることが大好きですが、最近自分で作ることにもハマっていて、普段家では炒め物くらいしか作れず家族から料理のセンスがないとよく言われているのでアッと言わせようと日々特訓しています。ホームベーカリーを購入して、プチパンを作ったら上手くいったので次はフォカッチャに挑戦しようと思っています。フォカッチャを作るならおいしいパスタも作ってみたい♪」
一文が長すぎ、また文中で趣旨が変わっていくため、最も伝えたい「パン作りにハマっている」ことの核がぼやけてしまっています。この文章をリライトするためには、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか。
一文をスリムにする
一文目の文章は95文字あり、その中に「パン屋巡りが好き」「自分で作ることにハマっている」「家族から料理のセンスがないと言われているので特訓している」という3つの情報が詰まっています。冗長で分かりにくいので、趣旨が違う文章はつなげず切りましょう。一文は60文字程度に収めると読みやすくなります。また、一文目は「普段家では~」から読点が一回もないため、趣旨が変わるタイミングでつけることをおすすめします。
目的語を明確にする
一文目の「最近自分で作ることにもハマっていて~」には何を作るのかを示す目的語が抜けています。目的語が不明瞭だと、読者に「何にハマっているの? 料理? パン?」と疑問を抱かせてしまい、伝えたいことが曖昧な文章になってしまいます。この場合は「最近自分でパンを作ることにもハマっていて~」とすると伝わる文章になります。目的語以外にも、主語と述語は明確にすることで違和感のない文章になります。
同じ表現を多用しない
一文目の「普段パン屋を~」と「普段家では~」と「普段」という単語が重複しています。言葉が重複しないように言い換えるか、意味が通じるようにつなげるなどして修正しましょう。
誤った接続詞や接続助詞を使用しない
一文目に「普段パン屋を巡ることが大好きですが、最近自分で作ることにもハマっている」とありますが「が」は逆接の接続助詞のため、文法として正しくありません。逆接は前後の文章で対立する内容の場合に使用します。パン屋を巡ることと、自分でパンを作ることは自然につながる内容なので、この場合は順接もしくは並列にしてつなげるのが正しいです。
余計な情報は削除する
文章内の「普段家では炒め物くらいしか作れない」「最初にプチパンを作ったら上手くいった」という情報は補足情報です。社内報は情報量が多く誌面が文章でいっぱいになってしまいやすいので、誌面スペースが少ない場合は思い切って削らせてもらいましょう。大切なのは、寄稿者が最も言いたいことは何かを見つけ、伝わるようにすること。文章を整理し、誌面に余白を持たせて魅力的なレイアウトにするのも担当者の腕の見せ所です。
上記を踏まえて、リライトした文章が下記です。
「普段からパン屋を巡ることが大好きで、最近自分でパンを作るようになりました。家族をアッと言わせようと日々特訓しています。ホームベーカリーを使用してフォカッチャ作りに挑戦したいです。おいしいパスタも手作りしてみたい♪」
最初の例文より、読みやすく意図が伝わる文章になったのではないでしょうか。文章のリライトは慣れるまで難しいですが、より読んでもらえる誌面を作るためにもぜひ挑戦してみてくださいね。
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〈ディレクター:大野〉
学生のとき出版社の面接に行き、提出したエントリーシートを見た面接官に「なぜこの単語をひらがな表記にしたのか?」と質問されたことがあります。ひらがな、カタカナ、漢字の表記一つでニュアンスが微妙に変化する繊細な言語だと改めて気づかされたと同時に、細部まで追求するプロのこだわりを感じた印象的な出来事です。原稿作成は難しいですが、その奥深さに惹かれてライティングを続けているのかもしれません。