DEIの観点から社内報を見直してみよう

近年、企業経営で「DEI」という言葉が注目を集めています。

DEIとは「ダイバーシティ(Diversity 多様性)」「エクイティ(Equity 公平性)」「インクルージョン(Inclusion 包括性)」の頭文字をとった略称のことです。

 

グローバル化や少子高齢化の進展とともに、企業で働く人はますます多様化しており、多様な人材に対していかに包括的に、かつ公平な機会を与えられるか、に着目している企業も増えてきています。

 

社内でDEIの風土を醸成するには、等しく社員が読むことができ、仕事のことからプライベートな内容まで、社員の話題を広く扱える社内報がうってつけです。

どんな企画ならDEIの理念を反映できるか、見ていきましょう。

 

社員のことを詳しく聞き出し、「ダイバーシティ(Diversity 多様性)」につなげる

 

たとえば「中途社員紹介」を掲載している社内報は多いと思います。

その際、配属部署や意気込みなどのよくある情報にとどまらず、さまざまな質問を織り込んでみましょう。

どんな仕事をしてきたのか」(=職務経歴)や「休日の過ごし方・趣味」など「話してみないとわからない」ことを紹介してみましょう。さらに「人生で一番大切なものは?」など、価値観や性格がわかりやすい質問を投げかけることも考えられます。

また、異業種から転職してきた人なら、前職の仕事内容についても教えてもらうと、読者も興味が湧くでしょう。

 

このように小さな質問でも、その裾野を広げていくことは、社員のダイバーシティ理解につながります。

ダイバーシティには「表層的ダイバーシティ」と「深層的ダイバーシティ」の2つの属性があり、後者は「職務経験・働き方・コミュニケーションのとり方・性格・趣味」など、外見からすぐには判断できないものを指します。当人にとっては深く根付いた特性であり、真の意味でダイバーシティを追究するなら、こういった一人一人の内面的な多様性を重視することが重要です。

 

その他のコーナーとしては、社員の地元を紹介するコラムを設け、遠方から就職している社員を登場させたり、出身地の方言の意味を当てるクイズを掲載したりすることも、外見からは判断できない社員の多様性理解につながる一助となります。

 

社員のパフォーマンスを最大化させるための「エクイティ(Equity 公平性)」

 

 

 

 

 

「エクイティ」とは「公平性」を意味します。従業員全員が最大限に能力を発揮するためには、それぞれに合った環境を整えることが重要となる、という考え方です。

重要なのは「イクオリティ(Equality)」とは異なる概念であること。単なる「機会均等」の場を設けるのではなく、個々の事情に寄り添って環境を改善し、それを後押ししていくことが「エクイティ」の実践に当たります。

 

たとえば「あなたの働き方相談室」という企画が考えられます。

質問者の勤務時間や勤務体系に関する悩みを受け付け、それに回答する形で会社の勤務制度を紹介する企画です。

たとえば、子供の保育園の送り迎えがあるために現在の勤務時間との折り合いが悪い場合に、勤務時間をスライドさせる措置を紹介することなどが考えられます。

それぞれ異なる環境の中でも、社員が最大のパフォーマンスを出せるよう、会社として制度を整えていることを示すことができます。

 

また、女性社員座談会の実施もよいでしょう。産休をはじめ、女性ならではの休暇制度もあることから、男性だけでは気が付かない「公平性」もあるかもしれません。

若手の女性社員、育児と仕事を両立する中堅の女性社員、管理職の女性社員など、社内のさまざまな女性社員を集めて座談会を行えば、それぞれの立場で制度を紹介でき、読者は自分に近い立場の人の発言を参考にできます

それまで知らなかった制度や、具体的な運用の仕方などについても理解が深まり、一人一人が自分のステージにあった、もっとも高い成果を出せる仕事の方法を追求しやすいでしょう。

 

バイアスを取り除いて「インクルージョン(Inclusion 包括性)」の実現を目指す

 

昨今、マーケティングなどで「認知バイアス」の活用が広まっており、バイアスはビジネスにおいて注目される概念です。

ついつい人が持ってしまうバイアスをヒントにビジネスを考えるほかに、単純に偏見を是正して、ハラスメント防止や人事評価エラーにつなげようとする動きもあります。

 

その動きになぞらえて、「アンコンシャス・バイアス」(無意識の偏見)を解消するためのコラムを企画化することが考えられます。

「営業担当者は体育会系が多い」「シニア世代はPCが苦手」といったものの見方はよく聞かれますが、こうした見方には根拠がありません。

むしろ、このような無意識の偏見や前提を覆してこそ成功した事例は決して少なくありません。

 

たとえば、ランドセルが挙げられます。普通は「男の子は黒、女の子は赤」と言われますが、そこをうまく突いたのがカラフルランドセルです。

カラフルランドセルの登場後、色の好みは細分化され、女子では赤だけでなくパープル、サックス(青に灰色を足した色)をはじめ、ブラウンやピンクなど、多様な色のランドセルが用いられるようになりました。男子では黒の人気が根強いですが、ブルーやブラウンも用いられています。街中で見かける子供のランドセルも、年々カラフルになっています。性別と色を結びつけていた「アンコンシャス・バイアス」を覆した好例です。

 

この「アンコンシャス・バイアス」は、DEIのI(インクルージョン)を阻害する要因として注目されている概念です。偏見は無意識のうちに持ってしまうことがあります。無意識ゆえに改めることが難しく、評価や関係性の構築で邪魔をしてしまうのです。

 

誰もが会社の中で一体感や存在意義を感じ、インクルージョンを実現する上では、根拠のない偏見は障害となりえます。偏見を是正することで、ビジネスチャンスの拡大も見込めます。社員の相互理解を深め、インクルージョンの推進につなげていきましょう。

 

**********

最近では「DEI」だけではなく「DEIB」という言葉も注目され始めています。

この場合の「B」はBelonging(ビロンギング)、つまり「帰属意識」のことを指しています。「インクルージョン」では組織が個々の従業員を包摂することに重点をおきますが、ここでは従業員が組織に受け入れられている安心感に重点が置かれています。

社内報の発行目的として「帰属意識」の向上は非常によく挙げられるテーマです。ご紹介してきた「DEI」にとどまらず、「DEIB」の推進を実現できる社内報制作を目指していきましょう。

 

 

ディレクター:今枝
意識しているつもりでも、やっぱり「アンコンシャス・バイアス」はあるな、と折に触れて思います。偏見を完全になくすことは難しいかもしれませんが、自分もひとつずつ、なくせるところからなくしていかなくちゃ、と思います。