社員作の川柳、社内報に勝手に載せたらどうなる?

<ここで一句>

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(筆者作)

 

社内報担当者の皆様、こんにちは。

8月31日の「ネタ帳」ブログに引き続き、今回も「著作権」がテーマです。冒頭の川柳は筆者作ですが、ご存じの通りこんな短文でも著作物となり筆者が著作者となります。知らずに著作権を侵害していたという事態にならないように、意識を高めていきましょう。

 

著作者を保護するための権利「著作者人格権」

著作物を創作する人を「著作者」といいますが、著作者が自己の著作物を保護するためにもつ権利を「著作権」といいます。この著作権、厳密には「著作権(著作財産権)」と「著作者人格権」の2つから成立しています。著作物を創作すると、自動的にこの2つの権利が著作者に発生します。

著作権(著作財産権)は「著作者が経済的利益を得る機会を保障するために認められている権利」ですが、もうひとつの著作者人格権とは「著作者の名誉や感情を守るために認められている権利」です。簡単にいうと、著作物の創作者である著作者が人格的・精神的に傷つけられないように保護するための権利といえます。この著作者人格権には「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3つの権利があります。

■公表権

公表権とは、未発表の著作物を公衆に提供・提示するかどうかを決める権利です。著作者の同意を得ないで未公表の著作物を公表すると「公表権」の侵害、つまり「著作者人格権」の侵害になります。

例えば、上記の川柳の場合。著作者が社内報の川柳募集に投稿してきた句であれば、公表が前提なのでそのまま掲載しても問題はありません。ただ、掲載する場合は「あなたの句を載せますよ」と連絡するのがマナーですよね。問題は「こんな句ができたよ」とLINEなどのSNSを通してプライベートで送られてきた句であった場合。公表を前提としていないので、著作者の同意なしに掲載してしまうと「公表権」の侵害にあたります。

「さっきの句、すごくいい句だったから、社内報に掲載してもいい?」と確認し、同意を得るようにしましょう。

なお、掲載の同意を得たとしても、それを自分の作品として掲載してしまうのは「著作権(著作財産権)」の「複製権」侵害となります。口頭でもいいので、著作者の許可をもらうようにしてください。

■氏名表示権

著作者は、著作物に氏名を表示するかどうか、表示する場合は実名を使うか、もしくはペンネームや芸名などを使うかを自由に決定できます。第三者が著作者の同意を得ずに勝手に著作者名を変更したり、ペンネームではなく実名を表示したりすると、「氏名表示権」の侵害、つまり「著作者人格権」の侵害になります。

例えば、上記の川柳の場合。投稿ペンネームが「崖っぷち☆乙女」だったとしましょう。しかしペンネームを「アラ還☆熟女」などと勝手に変えたり、つい本名で掲載してしまうと「氏名表示権」の侵害になります。勝手に投稿名を変えないようにしてください。

■同一性保持権

著作者は、著作物やその題号(タイトルや名称)の同一性を保持する権利があります。著作物自体やそのタイトルなどについて著作者の同意を得ずに改変した場合は、「同一性保持権」の侵害、つまり「著作者人格権」の侵害になります。

例えば、上記の川柳の場合。

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担当者が勝手に改変して掲載したとします。

 

「変える方が絶対に面白いから」という親切心からだったとしても絶対にNGです。著作者の同意を得ずに著作物の内容を勝手に変えることを「改変」といいますが、「同一性保持権」の侵害になります。

どうしても変えたいときは著作者に「こっちの方が絶対にいい句になるから」とアドバイスをして、著作者が「その通りですね。ぜひそのように変えてください」と言ってからにしましょう。

 

「著作者人格権を行使しない」とは?

 

「著作者人格権」とは、著作者の名誉や思い入れを守る権利です。

著作権(著作財産権)は契約書などで他人に譲渡することができますが、著作者人格権は著作権(著作財産権)を譲渡した場合も、著作者に残ります。そのため著作者に権利を行使されると、納品された著作物を公表したり修正したりすることなどができなくなってしまいます。

そのため、制作会社などはクリエイターと契約するとき、契約書に「著作者人格権を行使しない」という条項を入れることが多いのです。

社内報では社員に対してそこまで厳密な契約などは必要ないと思いますが、外部のクリエイターなどを使うときは気を付けるようにしてください。

 

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執筆者:ディレクター 西田
川柳のような短文は、どうしても似た作品になりがち。でも、故意ではなくたまたま似てしまった場合は「偶然の暗合」といって著作権上問題になりません。パクリにならないように気を付けて、面白い句をどんどん詠んじゃいましょう!